大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和43年(オ)1256号 判決 1969年5月02日

主文

第一、二審判決を左のとおり変更する。

上告人は、被上告人に対し金五八万五四二五円およびこれに対する昭和三九年四月一六日以降右完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

被上告人のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は、第一、二、三審とも上告人の負担とする。

理由

上告代理人宇野聰男の上告理由について。

所論の点に関する原審の認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし是認することができ、原判決に所論のような違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものであつて、採用するに足りない。

しかしながら、職権をもつて考えるに、原審は、被上告人が金融業を営むものであると認定し、本件貸金に対する遅延損害金を商法所定の年六分の割合によるべきものと判断しているが、金融業者であるというだけでは商人であるとはいえないから被上告人の本件貸付行為を商行為と推定すべき根拠はない。したがつて被上告人の上告人に対する金六〇万円の貸付金の遅延損害金の割合は民法所定の年五分とすべきものである。そして、原審の適法に確定した事実によれば、右金員の貸付日は昭和三八年一一月七日でその弁済期日は右貸付日より一週間後の同月一四日であり、右貸借については利息の定がなかつたものである。しかるところ上告人が右借入金につき昭和三九年四月一五日に金二万七〇六〇円を弁済したことは被上告人の自認するところであるから、これを先ず右弁済期日の翌日である昭和三八年一一月一五日以降右支払日までの右貸金六〇万円に対する年五分の割合による遅延損害金に充当し、その余を右貸金元本に充当すると、残元本は金五八万五四二五円となること計数上明らかである。結局、原審は、上告人に対し金五八万五四二五円およびこれに対する昭和三九年四月一六日以降右完済に至るまで年五分の割合による金員の支払を命ずべきであつた。それゆえ、これと異なる判断をした原判決は、商行為の解釈を誤つた結果、金銭を目的とする債務の不履行についての損害賠償の額に関する法の適用を誤り、かつ、適法に弁済充当をしなかつた違法がある。そして本件は、原審の確定したところに従い、直ちに判決をなしうる場合であること前記説示により明らかであるから、原判決および第一審判決を右のように変更することとし、民訴法四〇八条一号、九六条、九二条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 色川幸太郎 裁判官 村上朝一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例